「ふつう」という名の呪い
親の金で生きているわたしに、社会のことなんてなにひとつ、これっぽちも分からない。
親の金でCDを買って、ライブに行って、洋服を買って、友達と外食をして、なんでもかんでも買ってもらう。
自慢ではなくて、わたしは多分まだほんとうの苦しみを知らないんだと思う。
いじめられたこともなければ、大好きな友達がたくさんいる。自分の趣味のせいで人に馬鹿にされたり、軽蔑された経験もない。
いたって普通で、とても幸せな生活を送ってきた。
でもだから、とても不謹慎なことだとは知ってるいるが、そういう苦しみの中を耐え抜いて、必死に自分という自我を保ち続けた人たちに心の底から憧れた。
その黒くて強い輝きに嫉妬した。
なにもない自分に絶望した。
ふつうになれないと言う人たちが、なにを言っているのか分からなかった。その人たちはその人たちのままで充分輝いていた。眩しいほどに。
わたしにはなんの特徴も、特技も、好きなこともなかった。自分から何かを生み出すような才能もなかった。なにもないんだ。ふつうすぎるんだ。つまらない。
その人たちの黒い闇が、ひどく輝いているように見えた瞬間に、わたしは自分の平凡さを呪った。
ないものねだりなことも、不謹慎なことも、十分わかっているのだけれど、だれかの特別になるためにはそんな黒く輝く闇が必要なんじゃないかって思ってしまう。
ふつうのわたしを愛してくれる人はいますか。
何千人の中から、きみが特別だよって選んでくれる人なんているのですか。
わたしにとって、ふつうだねって言う言葉が1番の悪口だった。